アジア太平洋地域の電子廃棄物市場は2026年に過去最高の成長率を記録。中国・韓国・日本における政策強化と企業ESG需要の高まりが市場を牽引し、循環型経済への転換が急速に進んでいます。

1. 市場規模と成長率

2026年のアジア太平洋電子廃棄物市場規模は推計USD 580億に達し、前年比18.4%の成長率を記録しました。特に注目すべきは中国市場の急拡大で、政府の「廃棄電子機器回収促進法」施行により、回収率が前年の34%から47%に向上しました。

日本においても、製造業大手によるESG調達の強化が電子廃棄物市場に大きな変化をもたらしています。Sony・Panasonic・Toyota などの主要企業が、サプライチェーンにおける再生素材の調達比率を引き上げており、認証済みリサイクル素材への需要が急増しています。

電子廃棄物プラスチックの精錬
写真: 回収プラスチックの精錬・素材化プロセス(大阪精錬工場)

2. 規制環境の変化が市場を動かす

2026年の最も重要な市場ドライバーは、規制環境の急速な変化です。EU電池規制(2027年完全施行)への準備として、日系製造業は欧州向け製品のサプライチェーン整備を急いでいます。この動きが、認証済みリサイクル素材の需要を大幅に押し上げています。

2026年 重要市場トレンド

  • アジア市場全体の電子廃棄物回収率が初めて40%を突破
  • EU電池規制対応需要でリチウム・コバルト再生市場が急成長
  • AIによる自動分類システムの普及が精錬コストを32%削減
  • ブロックチェーン追跡システムの標準化でESG監査が効率化
  • 中国・インドの国内規制強化でインフォーマルリサイクルが縮小

3. レアメタル市場の新潮流

電気自動車の普及に伴い、リチウム・コバルト・ネオジムなどのバッテリー関連素材の回収市場が急速に拡大しています。2025年度の廃EV電池回収量はアジア全体で前年比280%増加し、新たな「都市鉱山」として注目されています。

一方で、ICE(内燃エンジン)車から触媒として回収されてきたパラジウムの需要は縮小トレンドにあります。EV普及によるICE車比率の低下が長期的なパラジウム市場の再編をもたらすと予測されており、リサイクル事業者の戦略転換が急がれています。

4. テクノロジーが変える回収効率

AIと機械学習を活用した自動分類システムの普及が、リサイクル業界のコスト構造を根本から変えつつあります。従来、熟練工による目視検査が必要だった基板・部品の分類が、精度98.5%のAIシステムにより完全自動化。処理コストを平均32%削減することに成功しています。

山田 健

シニア市場アナリスト

電子廃棄物・レアメタル市場を10年以上取材。前職は日経エレクトロニクス記者。E-Waste Recovery Hub マーケットインテリジェンス部門。